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Introduction

ベル・エポック(美しき時代)と呼ばれた19世紀末パリ。

普仏戦争での大敗を期に、第二帝政から第三共和政へ激動の幕開けを迎えた時代でしたが

経済都市として大きく発達していたパリでは多くの見本市や博覧会が開催され、世界の大都会の一つとして権勢を誇った時代でもありました。

鉄筋を用いた建造物が数多く作られ、1889年にはパリを象徴するエッフェル塔が登場。
美術の世界ではルノワールやドガなどの印象派が活躍し、90年代ではシュレやロートレックのポスターが美術史に名を響かせ、

さらにはミュシャを代表するアール・ヌーヴォーの世界も始まります。

ドゥミモンドをはじめとした風俗社会が影響を及ぼし、フランス・バレエ史においては斜陽の時代とも批評されていますが
フォリー・ベルジェールやムーラン・ルージュといったミュージックホール、そして曲芸師や道化師を引き連れたサーカス興業が活躍し
大衆文化が華々しく繁栄した時代でもあったのです。

そんな当時に作られたビスクドール達は約130年近くもの歳月を経た今でも、輝かしきベル・エポックの名残を私たちに伝えています。

ビスク(二度焼きの陶器)の頭を持つ彼女たちは、大量生産と言えども職人一人ひとりが手間と材料を惜しまず作り

現在の産業ロボットが作る無機物な製品とは違う、作り手の魂が宿ったその美しさに、当時の婦女子たちは永遠の憧れを抱いていました。


ジュモー、ブリュ、ゴーチェなど、数多くの工房が競うように人形業へと専念し、工房それぞれの個性豊かな人形たちは
ボンマルシェやプランタンといった一流百貨店のショーウィンドウに飾られ、当時のパリをガラス越しに見守っていたのです。

しかし1914年に第一次世界大戦が勃発すると、高級志向であったビスクドール界は衰退し、ベル・エポックの輝きと共に彼女たちはひっそりと姿を消したのでした。

半世紀ほどの歴史と言えども黄金期を築き上げたビスクドール。
彼女たちの表情はただ美しいだけではなく、職人達の惜しみない愛情による温かさ、そして世界大戦を二つも乗り越えた歴史の重みもあるように思えます。


本来芸術作品として作られた物では無いにせよ、ビスクドールは「美しき時代」に生きた人々の情景、言わば当時のパリの文化を読み取ることが出来る貴重な存在でもあるでしょう。

 

そんなビスクドールたちの存在を「CHARIS」にて、当時の歴史背景を思い浮かべつつ御覧頂けたらと思います。

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